レポートや論文を作成する際に意外と忘れがちな数式や単位の注意事項

レポートや論文で気にせずに書いていることが意外と間違っていたりします。特に数式や単位の間違いが散見しているのが現実です。見逃されたり指摘されなかったりする場合を多々見てきました。

本記事では、レポートや論文の体裁を正し、質を高めてもらえるような内容となっています。そのため、主に見受けられる注意事項について紹介します。

基本的に数式には式番号を付ける

レポートや論文には、数式が多く記載されると思います。では、何故数式を載せるのでしょうか。その答えは単純で、概念を一般化し、その性質や特性を明瞭に示すためです。しかし、数式を提示しただけでは意味が汲み取れません。そのため、数式には式番号を明記し、文中で式を参照し、意味を付加するのが基本となります。

\( X(s) = \displaystyle\int_{0}^{\infty} x(t)e^{-st}\,dt \tag{1} \)

例えば、文中に「上の式は、…」や「次式は…」と書かれた場合、どの式であるかは明示的ではありません。それまでに数式が2本あれば、誤解を招く可能性が発生してしまうため、避けるべきだと考えられます。

ある連続な実関数\(x(t)\)のラプラス変換\(X(t)\)は、次式のように半無限区間の積分によって定義される。
  \( \displaystyle X(s) = \int_{0}^{\infty} x(t)e^{-st}dt \)
  \( \mathcal{L} \{x(t)\} \equiv X(s) \)
ただし、\(t<0\)で\(f(t)=0\)である。

文章の意味を正確に把握すれば誤解を招くことはありませんが、誰が読んでも理解できるようにするのが基本である。当然のことながら、書面に起こすのは自分以外の他人に報告するためだからです。この考え方はレポートの質にも関わるため、念頭においておくべきです。

物理量を除く文字は斜体(イタリック体)にはしない

数式中の物理量を除く文字は斜体(イタリック体)ではなく、ローマン体(垂直に正立した書体)を用います。しかし、慣用的に物理量でなくとも、斜体(イタリック体)を用いる場合もあります。

\( \displaystyle{ E = \textrm{h} \nu = \dfrac{ \textrm{h} c }{ \lambda } } \tag{2} \)
ただし、プランク定数 \( \textrm{h} (6.624 \times 10^ {-34} \ (\textrm{J} \cdot \textrm{s}) ) \)、波長\( \lambda \)、振動数\( \nu \)である。

上式は高校物理で登場する光子が有するエネルギーを表しています。式中で物理量でないのはプランク定数\( \textrm{h} \)です。そのため、ローマン体で表記されます。しかし、書籍や教科書等で散見されるのは以下のように、慣用的に数式内の文字がすべて斜体(イタリック体)で表記されます。

\( \displaystyle{ E = h \nu = \dfrac{ h c }{ \lambda } } \tag{3} \)

そのため、ルールで規定されていない場合には、慣用表現で示しても構わないと考えてよいです。

数式内の積は表記しない

数式内の積記号は基本的に省略します。間違いとして、式中に「×」や「・」を書いてしまう場合が散見されます。

高等学校以前では、積の意味を持つ記号として「×」や「・」を用いていました。しかし、数学では別の意味を含むため、明確な区別をする必要があります。ただし、必ずしも区別しない場合もあります。

例として、物理で学ぶ線形フックの法則をもとに説明します。

\( ( \bigcirc ) \ F = \textrm{k} x \tag{4} \)
\( ( \bigcirc ) \ F = kx \tag{5} \)
\( ( \times ) \ F = k \cdot x \tag{6} \)
\( ( \times ) \ F = k \times x \tag{7} \)
\( ( \times ) \ F = k \ast x \tag{8} \)

式(6)の「・」はベクトルの内積を表す記号です。物理量がスカラーであれば問題ないが、誤解(数式の物理量はベクトル?)を招く可能性があります。
式(7)の「×」はベクトルの外積を表す記号です。物理量がスカラーであれば問題ないが、誤解を招く可能性があります。
式(8)の「*」は関数の畳み込み積分(*1)を表す記号です。物理量云々ではなく、スカラー量でも表記してはいけません。よく数値計算ソフトや表計算ソフトの積記号「*」として乗算させる場合に用いられています。しかし、レポートや論文等の文章ではそのまま用いてはなりません。

(*1) 畳み込み積分は以下のように定義されます。

\( \displaystyle{ f(x) * g(x) = \int_{-\infty}^{\infty} f(t)g(x-t)\,dt } \)

変数の添え字はローマン体

添え字は左下に、かつローマン体で表記しなければなりません。

\( ( \bigcirc ) \ F = k_{ \textrm{spring} } x \tag{9} \)
\( ( \bigtriangleup ) \ F = k_{ spring } x \tag{10} \)
\( ( \times ) \ F = kspring \ x \tag{11} \)

式(10)の添え字は斜体(イタリック体)で示していますが、慣用的に許されます。ただし、原則としてローマン体で表記すべきです。式(3)のように添え字を左下に配置しない場合は、それぞれの文字の積「\( k \cdot s \cdot p \cdot r \cdot i \cdot n \cdot g \)」として解釈されてしまいます。そのため、添え字はしっかりと左下に配置してください。

また、以下のような最大値を表記するときにイタリック体とローマン体とが混在することも見受けられます。

\( ( \bigcirc ) \ F_{ \textrm{max} } \tag{12} \)
\( ( \bigtriangleup ) \ F_{ max } \tag{13} \)

数式中の関数は斜体(イタリック体)にしない

数式内で調和関数(\( \sin \theta \)など)や指数関数(\( \log x \)など)を表記する場合、その関数は斜体(イタリック体)ではなくローマン体にします。この間違いは、論文で見かけることは少ないが、レポートではどうしても多い間違いであるようです。

例えば、オイラーの公式は次のように表記されます。

\( ( \bigcirc ) \ e^{i\theta}=\cos \theta+i\sin \theta \tag{14} \)
\( ( \times ) \ e^{i\theta}=cos \theta+isin \theta \tag{15} \)

ここで、ネイピア数\( e \)は当然関数ではありません。

単位は斜体(イタリック体)にしない

単位は斜体(イタリック体)ではなく、ローマン体にしなければなりません。この間違いはよく見受けられます。意識しなければあまり気にならないかもしれません。

例としてプランク定数\(h\)を用いて説明。

\( ( \bigcirc ) \ h = 6.624 \times 10^ {-34} \ ( \textrm{J} \cdot \textrm{s} ) \tag{15} \)
\( ( \times ) \ h = 6.624 \times 10^ {-34} \ (J \cdot s) \tag{16} \)

このように、単位はローマン体で表記します。文献や教科書を見てもらうとすぐに気づくと思います。数式に限らず、グラフや表中の単位も同様のことが言えるため、意識するとよいと思います。

単位の括弧は統一し、全角半角も揃える

単位の括弧は、角括弧[]もしくは丸括弧()に統一し、全角括弧もしくは半角括弧に揃える。特に、全角と半角が混在するものをよく目にします。

\( (\bigcirc) \ R = 8.3145 \, [ \textrm{J} / (\textrm{mol} \cdot \textrm{s} ) ] \tag{17} \)

数学記号はできる限り国際標準に則る

数学には厳密に定義された演算子(記号)が多く存在します。用いる際には、国際標準に従うことが最も良いと思います。

例えば以下のようなものがあります。

\( ( \bigcirc ) \ A \approx B \tag{18} \)
\( ( \bigcirc ) \ A \sim B \tag{19} \)
\( ( \bigcirc ) \ A \simeq B \tag{20} \)
\( ( \bigtriangleup ) \ A ≒ B \tag{21} \)

「≒」は日本語の文章でよく用いられますが、少数の地域でのみ使われる記号です。

最後に

いかがでしたでしょうか?
案外、意識されないような細かい部分にも触れてみました。こういった細かい部分の間違いは指摘されずに、そして気づきづらいと思います。日ごろのレポートから意識してみるとよいかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました